【最高6,000万円まで非課税】特定贈与信託とは?障害者の贈与税の特例について。

以前うつ病などの精神疾患や身体障害を持っている方に対しての相続税の優遇措置について書きました。

(前回の記事はこちら ⇒ うつ病や統合失調症などの精神病だと相続税・贈与税が安くなります

そのときに、贈与税の特定贈与信託についての記事を書けなかったので、今回そのことを取り上げます。(2019年4月現在の税法等による)

 

対象としては、

  1. 親族や助けてあげたい方に重度の障害者が居て
  2. お金や収益不動産が潤沢にある方で、なおかつ
  3. 余命3年以内の方

であれば有効な活用が出来るかと思われます。

 

特定障害者に対する贈与税の非課税

国税庁HPより

特定障害者(こめ)の方の生活費などに充てるために、一定の信託契約に基づいて特定障害者の方を受益者とする財産の信託があったときは、その信託受益権の価額のうち、特別障害者である特定障害者の方については6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者の方については3,000万円まで贈与税がかかりません

この非課税の適用を受けるためには、財産を信託する際に「障害者非課税信託申告書」を、信託会社を通じて所轄税務署長に提出しなければなりません。

特定障害者は、

  • 特別障害者(障害者手帳1級などの重度障害者)
  • 障害者のうち精神障害者(中程度および精神障害者手帳2級3級)

を含みます。

相続税の特別控除は特別障害者の方のみであったため、

それよりも控除される人の幅が広くなっております。

「障害者非課税信託申告書」は信託契約締結時に信託銀行が受託者として税務署に提出することになりますので、通常出し忘れることはありえないと考えられます。

信託財産をあげる人と貰う人の関係も特に問われていませんので、親族以外の方でも契約が可能です。

 

メリット

贈与税が掛からない

  • 特定障害者であれば6,000万円まで金銭を贈与(信託)しても非課税

 

ふつう、暦年贈与で6,000万円も子どもに贈与すれば、2,660万円の贈与税(特例贈与)が取られることになりますが、この制度を活用すれば税金はかからずに子どもに財産を移転することができるため、その税金メリットは大きいといえるでしょう。

3,000万円でも、贈与税は1,085万円掛かるところが0円になるのは大きいですね。

相続開始前3年内の贈与財産の加算対象にならない

相続税の計算上、相続開始前3年内(亡くなった日からさかのぼって3年前の日までの間)に行われた相続人への贈与は、無かったものとして相続財産に足し戻します。

自分の死期を悟った被相続人が、生前に相続人に財産をばらまくような過度な相続税の節税を図ること防止するのが目的の規定です。

ところが、特定贈与信託で信託される財産にはこの規定は適用されません。

そのため極端な話、亡くなる直前であっても適切に特定贈与信託契約さえ巻いて財産を信託すれば、その分は相続税も贈与税も掛からないことになります。

 

デメリットは?

信託銀行に手数料が掛かる

信託銀行の業務の一環として行われるため、当然ですが銀行に対して手数料が掛かります。

手数料は信託する財産から差引かれるため、6,000万円信託してもその全額があげる人の手元に行くわけでは無いんですね。

大手信託銀行さんでHPで確認できる範囲の費用を調べてみました。(2019年4月時点)

みずほ信託:信託設定時に信託財産額の3%+消費税の信託手数料が発生+信託財産から信託報酬

三井住友信託:信託財産額の1.5%+消費税の信託手数料が毎年発生

三菱UFJ信託:信託財産額の1.5%+消費税の信託手数料が毎年発生

※実際に取組んで確認した訳ではないので、他にも信託手数料が発生する可能性もあります。自己責任での記事活用をお願いいたします。

 

確認していて思ったのは、大手信託銀行さんも積極的に前面に出すサービスではないんだろうな、と。

あくまで私見ですが。活用事例も少ないのではないでしょうか。

 

信託契約は中途解約できない

特定贈与信託は受益者である特定障害者の方の死亡の日に終了します。

もしくはその前に、信託財産を使い切って無くなれば終了します。

信託期間は変更することができません。受益者が亡くなるまでの間に生活保障をする役割での信託ですので、これら以外に設定することはできないようになっています。

信託財産は元本割れのリスク・預金保護(ペイオフ)の対象外

信託銀行では信託された財産(多くはお金)を、信託受益権というお金とは違うものに変えて運用します。その結果、運用成績によっては元本割れしてしまう可能性(ほぼ無いはずですが)があります。

また、万が一契約した金融機関が破綻した時の預金保護(ペイオフ)の対象にもなりません。

 

 

その他にも、財産は自由には引き出せない、相続時の遺留分侵害の可能性を検討する必要がある等の検討しておくべき問題があります。

 

まとめ

特定贈与信託について個別に公表しているデータが見つからなかったので正確なところは解りませんが、あまり活用されているとは言いがたいでしょう。

対象となる方がかなり少ないのがボトルネックだと思います。

ただ、それでも、

①親族や助けてあげたい方に重度の障害者が居て

②お金や収益不動産が潤沢にある方で、なおかつ

③余命3年以内の方

であれば一考の余地はあるかと思います。

 

相続関係でお困りの方は、ぜひ一度、梅田中央税理士事務所にご相談ください。

まずは教育資金贈与のほうからご提案させて頂きます。

 

教育資金贈与についてはこちらも読んでみてください。

【税制改正】教育資金贈与信託の使い方にちょっと待った!23歳以上に厳しく、3年内贈与加算の対象にもなるかも。

 

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代表の経歴とご挨拶

 

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    この記事を書いた人

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    塚本 晃行(つかもと てるゆき)

    公認会計士・税理士
    三木市出身、神戸市育ち、西宮市在住の兵庫っ子。
    1980年生まれ。
    大阪梅田で相続税申告・対策メインの税理士・公認会計士のお仕事をしてます。