こんにちは。大阪梅田で相続税メインのお仕事をしている税理士・公認会計士の塚本です。
新型コロナウイルスの影響などの合理的な理由があって税金が払えない時に使える制度として、
「納税の猶予申請」「換価の猶予申請」があります。
この制度は国税全般に適用されるので、相続税でも使うことができます。
すこし前に国税庁HPに納税が困難な方への猶予制度の説明ページがアップされました。
新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ (国税庁HP)
国税を期限内に納付できないとき(国税庁HPタックスアンサー)
税務署に確認して相続税でも実際に申請を行いましたので、そのことを掘り下げたいと思います。
(払いたいけど払えない・・・)
この制度を申請して認められれば、猶予期間中の延滞税が免除または減額されます。
ちなみに税金自体が減額されるわけではありませんので、そこはくれぐれもご注意ください。
納税の期限が過ぎたけど、税金の支払いをちょっと待ってもらい、その間の延滞税を減額してもらうためのものになります。
相続税を申告はしたけれど、納税を前にして新型コロナウイルスなどの影響により納税が困難になってしまった、というかたは検討ください。
換価の猶予
つぎの5つの要件にすべて該当する場合は、換価の猶予が可能となります。
国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
納税について誠実な意思を有すると認められること
換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること
原則として、担保の提供があること。
ようするに「本当はお金があれば支払うつもりですが、いまは余剰のお金が無いので支払いはちょっと待ってください」という意思を示すものになります。
認められれば、猶予期間中は延滞税も1.6%(令和2年。以下の利率も同じ)となります。
通常は申告期限から2か月間が2.6%、それ以降は8.9%の延滞税となりますのでそれだけでも大分違いますね。
納税の猶予
つぎの4つの要件にすべて該当する場合は、納税の猶予が可能となります。
① 次のAからFまでのいずれかに該当する事実があること
A 財産について、災害を受けたり盗難にあったこと
B 納税者や家族が病気にかかったり負傷したこと
C 事業を廃業したり休業したこと
D 事業について著しい損失を受けたこと
E 上記のAからDに類する事実があったこと
F 本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定したこと
② 猶予該当事実に基づき、納税者がその納付すべき国税を一時に納付することができないと認められること
③ 申請書が提出されていること(上記Fの場合は納期限までの提出)
④ 原則として、担保の提供があること
納税の猶予のほうが要件が厳しくなっています。
猶予を受けるための手続き
猶予を受けるためには、つぎの書類を税務署に提出する必要があります。
① 「換価の猶予申請書」または「納税の猶予申請書」
② 「財産収支状況書」(猶予の金額が100万円を超える場合は、「財産目録」及び「収支の明細書」)
③ 担保の提供に関する書類
④ 災害などの事実を証する書類(納税の猶予の場合)
「換価・納税の猶予申請書」
こちらを記入し管轄の税務署へ提出します。
「財産収支状況書」※税額が100万円以下の場合
担保の提供
この猶予の申請をする場合、原則として猶予金額相当の担保を提供する必要があります。
しかしながら、次のいずれかに該当すれば、担保の提供は必要ありません。
・猶予を受ける税金が100万円以下
・猶予期間が3か月以内
・担保として提供できる財産がないといった特殊事情がある場合
です。
今回の新型コロナウイルスの影響によるものもかなりの特殊事情ですので、税務署に相談すれば、柔軟な対応をしてくれる可能性は高いと思われます。
猶予される期間
猶予の期間は通常は1年以内になります。
その範囲内で申請者の財産や収支の状況に応じて、完納できる期間に限られます。
しかし、猶予期間内に完納できない止むを得ない理由があると認められれば、猶予期間中に所轄の税務署に猶予期間の延長申請をすることで、最長で2年の範囲で猶予期間が延長されます。
このあたりは税理士を通して税務署の担当者と直接交渉することが望ましいでしょう。