「そうか、、、
そういうことだったんだな・・・。」
夜明け前。
ティティはひとりごちた。
彼のなかで光明が見えた。
今まで漫然と悩んでいたことに対しての答えがでたのだ。
300万円を10年間。それをパーティの人数分だ。
暦年贈与のベストバランス。
暦年贈与(レキネンゾーヨ)。
リュックが大きい人が旅を終えて相続税(ソーゾクゼイ)を多く取られる前に、旅路の途中でリュックの中身を子どもや孫にあげていくのだ。
リュックの中身が大きい人ほど、300万円をもっと超えて贈与していくほうが結果的に取られるゼーキンは減る。
500万円あるいは1,000万円程度のまとまった金額であげるほうが、トータルの税金は安くなる旅人もいる。
2列目、3列目の若い旅人はもらうだけ。
まったくうらやましい限りだが、世の不公平を嘆いても仕方がない。
これは、旅路を終えたときのソーゾクゼイ(相続税)とその前にもらうゾーヨゼイ(贈与税)の税率の差から生じる。
この世界のルールである。
前回までの話はこちら
【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ダイヤモンドは相続財産~ 第1話
【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ダイヤモンドは相続財産~ 第2話
【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~他人のリュックに勝手にものを入れるのは良くない~ 第3話
【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~そしてイェンは渡された?~ 第4話
【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~餅は餅屋に~ 第5話
【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~最期のラヴ・レター~ 第6話
【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ゼムッショとの闘い~ 第7話
暦年贈与の最適解
「やっぱさ、まずは300万円から開始(はじ)めてみようよ、オットーさん。
毎年のゾーヨゼイ(贈与税)を取られるのはあんたじゃないんだし、取られるほうからしたら19万円くらいの痛みで無いとしんどくなるんだって。
それにね、まぁこのくらいの金額だったらオッ・・・と、これ以上は言えねえ、察してくれ。」
ティティは言った。
「むぅ。そうなのかティティよ。
しかし、あんたのシミュレーションだと、わしはもっと子どもや孫たちにあげるほうが結果的に取られる税金が減るのではないか?それでも300万円で良いのか?」
「うん、その通りだよ。
あんたなら700万円とか、もっとあげても良いんだよ。
節税(セツゼー)だけを考えるならね。
でもね、オットーさん。
300万円といったのには、いくつか理由があるんだ。」
贈与税(ゼーキン)のボディブロー
「まずね、ゼーキンを取られるタイミングが違うんだよ。
レキネンゾーヨ(暦年贈与)の税金は毎年だ。
これを貰ったひとが払っていくんだ。
もちろん貰ったものから支払うわけだし、払えないなんてことはまぁ考えにくい。
ところがそれは貰うものが現金の場合だ。
株式とか不動産をあげることもあるだろう。
そんときでも贈与税は現金一括納付が原則なのさ。物納もダメ。
たとえば500万円ずつみんなにあげるとしようか。
そうするとね、50万円近くのゼーキン(贈与税)を取られてしまうのさ。
株ももらって嬉しいんだけどさ、子どもや孫が毎年50万円近くの現金をひねり出して、税金を払わなきゃなんないんだぜ?
やっぱりしんどくなるって。
これがボディブローのように精神(こころ)に効いてくるんだよ。
あげる人にももらう人にもね。」
贈与税はもらったひとが払うもの
この50万円という金額もくせものでね。
ゼムッショ(税務署)もこの金額の預金移動をチェックの基準にしてるらしいんだ。
1回の引き出し限度額だからかも知れない。
あんたがさ、税金支払い用にお金を出してあげるのも良いんだけど、それも贈与税の対象になってしまうのさ。
ふつうの感覚から言っても、50万円毎年お金を払うってのは、ボディブローとして相当キツいぜ。
さっきも言ったように、300万円の税金は19万円だ。
これなら手持ちの・・・おっとダメだ、これ以上は察してください。お願いします。」
もらう人の無駄遣いリスク
サブロゥさんを見てごらんよ。
カネが入ったらその足で、ギロッポンのサワジエリリカの店に行ってボトルを開けそうだろ。
そうさせないための作戦は考えてあるんだけどね。
サブロゥさんには現金以外を渡すことと、毎年のカネの使い道をチェックはする。
300万円は十分大きい金額だよ。
それでも、あげてすぐに使われるんだったら出来るだけ少ないほうが良いだろ。
身に余るカネは人生を狂わせることもあるんだから。」
とティティは言った。
「サワジリエリカはしばらく店に居ないんじゃないか・・・。」
とオットー。
300万円ずつあげて10年後の状況をしめす
「300万円で10年間続けてみよう。
その間はずっと寄り添ってサポートするし。
それで1人あたり3,000万円もの財産をわたせるんだ。
それだけあれば、子どもたちの老後の足りない分だって補えるだろ。
10年後はこうなっているはずだぜ。」
ティティは10年後のスズッキ家の状況を出来るだけ仔細に示した。
10年後をどれだけ具体的に示せるか、ここが専門税理士(ゼーリシ)の腕の見せどころでもあるのだ。
それにさ、こんな時代でなにが起きるか分からないから、その都度贈与プランは見直ししていこう。」
そして、まとめ
「わかった、ティティよ。その提案に乗ろう。」
「ありがとう、オットーさん。
ゼーキンのことよりも一族がハッピーに過ごしていくことが、一番大事なことだからさ。」
オットーさんはすごい人だ。
こんな年下の言うことでも価値があれば素直に聞いてくれる。
レキネンゾーヨ(暦年贈与)をティティは最強のスタンド(方法)だと確信してる。
それでも注意点を守って正しくやっていかないと、効果を十二分に発揮してくれない。
節税は二の次である。
一族の笑顔と末永い繁栄がもっとも大事なのだ。
こういう人と、もっともっとつながりたい。
こういう人こそ、ティティにとっての理想のお客さまなのだ。
To be continued…
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