「この世界には2種類の人間がいる…」
「リュックの中身を減らしてから旅を終える人間とそうでない人間だ」
ティティはうまくないことを言った。
前回までのお話はこちらから
「レキネンゾーヨ」という愛
リュックの中身を旅を終える前にパーティのだれかに渡す。
そうすると、一定基準以上であれば「ゼーキン」を取られる。
その基準は1年間で110万イェン。
このことを「レキネンゾーヨ」という。
渡すほうは「レキネンゾーヨアゲル」、もらうほうは「ワカッタアリガト」といって、誓いの紙を残すのがその時の慣わしだ。
その光景は砂漠のオアシスに咲く花のように美しい。
ところが、である。
勝手にものを入れないで
リュックの重い者のなかには、だまって勝手にパーティメンバーのリュックにイェンを放り込む者もいる。
パートナーはもちろんのこと、2列目、3列目のものたちのリュックにまで勝手にイェンを入れる。
放り込まれた方は気づいていないことが多い。
あの慣わし「アゲル」「アリガト」をしないからだ。
気づいたとしても、リュックの重い者が管理しているので、勝手にさわれない。
なぜこんなことをするのかというと、単純に「ゼーキン」を払いたくないから。
「ゼーキン」は痛み。痛みは少しでも無いほうが良いに決まっている。
そのためにリュックを軽くしようとするのだが、「アゲル」「アリガト」を省くのは良くない。
パートナーのイェンはだれのもの?
長い時間いっしょに旅をしてきたパートナーの場合は、また異なるケースがある。
パートナーがパーティ全体の生活を中から支えるのはよくあることだ。
そのためにリュックの重い者は毎月、決まった額の「イェン」をパートナーに渡す。
パートナーは自分の仕事としてパーティを支えるために「イェン」を使う。
その「イェン」は使い切ることなく、少しずつパートナーの手元に貯まっていく。
パートナーからすれば、それは生活の創意工夫で勝ち取った財産である。
へそくり、と呼ばれるものだ。
これが1年間の「レキネンゾーヨ」の110万イェンを超えることがある。
そしてパートナーのリュックが重くなっていく。
パートナーは思う。
「いや、それウチのやん。だんなが毎月生活費でくれてた残りよ。やっぱりウチのやん。」
ゼーリシであるティティにも、気持ちは非常に良く分かる。
ティティに1国を支配する力があれば、その主張を認めるだろう。
旅の終わりに「メーギヨキン」
そして旅を終える。
そうすると「レキネンゾーヨ」という愛は実り「ゼーキン」はかからない。
(ただし、旅を終える3年前までの分までなので要注意だ。あと110万イェンを超えた分はその時にゼーキンがかかるぞ。)
ところが、
・他人のリュックに勝手に入れていたイェン
・パートナーのへそくりイェン
この2つについては、「ヒソーゾクニン」の財産として「ゼーキン」がかけられてしまう。
「リュック借りてるだけ。それは「ヒソーゾクニン」のもの!」というゼムッショの道理だ。
このことを「メーギヨキン」という。
「ゼムッショ」の連中が最も注意深く監視するのがこれだ。
そして、今回のまとめ
「ちくしょう、だから言ったのに、、、。て、ダメか。。」
旅を終えた者にいくら言ったところで、過去は変えられない。
ティティがメーギヨキンの痕跡を発見、ソーゾクニンはその分も「ゼーキン」を払った。
イェンの出入りを詳細にチェックしていたときに、不明瞭なイェンの流れを発見したのだ。
「今回もホームページを見てくれたソーゾクニンだったから、とても良い人だった。
だから、なんとか理解してくれて、ちゃんとゼーキンも払ってくれたんだ!でも、、でも、、、。」
ソーゾクニンがシライシマイ似だったから、つい話が長くなったのではない。
メーギヨキンなんてよく分からないものに、ゼーキンが取られるという事実を理解してもらうためにじっくりと話し合っただけだ。
「もっと、、、もっと早くに出会っていれば、もっと出来ることがあるんだ!」
ティティもまた旅人である。
彼のリュックはまだ軽い。
昨日の父の日に、子どもから手作りのスマホスタンドをもらった。
自分のリュックから子どもたちに何かを渡している一方、それ以上のものを日々もらっているのかも知れない。
それはきっとゼーキンで取られないはずだ。
To be continued…
つづきはこちら
【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~そしてイェンは渡された?~ 第4話
用語解説
・レキネンゾーヨ…暦年贈与。
1年間で基礎控除110万円までなら非課税で贈与が出来る。相続節税の王道。「あげる」「分かったありがとう」というお互いの合意を客観的に残すために、契約書は必須。3年内なら相続財産にカウントされる。
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相続開始前3年内でも問題なし!節税できる暦年贈与の方法を解説
・メーギヨキン…名義預金。名義財産。
形式上は相続人などの親族名義であっても、実質的に被相続人の管理下にあるお金。被相続人の財産として相続税がかけられる。
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預金通帳をしっかり見ない税理士はダメ!税務署も100%見ます。
・他人のリュックに勝手に入れていたイェン
名義預金の一種。被相続人が親族名義の預金通帳を作ってそちらに資金を移しておくことが多い。ハンコも通帳も被相続人が管理。その名義人である相続人は、通帳の存在を知らない。税務署は親族名義の通帳もチェックするので、そこですぐに見つかる。
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・パートナーのへそくりイェン
名義預金の一種。毎月定額で生活費を渡していたときの残りのお金。厳密には贈与。長期間にわたると、結構な金額が積みあがる。これが良い悪いの話ではない。その事実を税理士が見つけた時に、相続財産に計上するようにお客様を説得することが大事。
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