【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~そしてイェンは渡された?~ 第4話

前回までのおはなしはこちら

 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ダイヤモンドは相続財産~ 第1話

 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ダイヤモンドは相続財産~ 第2話

 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~他人のリュックに勝手にものを入れるのは良くない~ 第3話

 


 

資産家スズッキ家の憂鬱

 

 

その日、「スズッキ」パーティの2列目で長男のイッチローは不満を隠そうとしなかった。

イッチローの不満の種は隣りの男、三男サブロゥだ。

 

 

 

 

サブロゥは独り身である。パートナーはいないし3列目の子どももいない。

気楽なものだ。

なんの仕事かは分からないが、仕事をしてリュックに財産を貯めている。

 

にもかかわらず、1列目の父親オットーの巨大で重いリュックからどんどんイェンを取り出しては使っていた。

旅路のなかでの細々した支出にたいして使っているようだ。

 

「セツゼーセツゼー♪」と変な歌を口ずさみながら。

 

オットーはサブロゥにはあまり口出しをしない。母親のオッカーもサブロゥには甘い。

末っ子は無条件にかわいい。恐ろしい真理だ。

 

 

 

イッチローは真面目な男である。

責任感もつよい。

 

そして、何よりも周りの人間に迷惑を掛けることを嫌っている。

その点でオットーの性格をしっかり引継いでいる。

 

だからこそ、いくら自分のリュックの中身が少なくとも、オットーのリュックからイェンを取り出すなどもっての外、あってはならないことだと思っている。

 

「サブロゥのは、まぁ少しずつだし、それで「ゼーキン」が取られるようなものでもあるまい。水や食料は良いけど、ジョジョやドロヘドロとかのマンガくらい自分で買えよ、とは思うが。それでもゼムッショが来たりしてみなの迷惑にさえならなければ・・・いまはまだ、大目に見よう。」

 

そう思って、普段のサブロゥの行動には目を瞑ってがまんしていた。

 


 

 

話をもとに戻そう。

普段はがまんしていたイッチローが不満を隠さないのは、ある時サブロゥがこう言いだしたからだ。

 

 

「オットー。300万イェンくれ。」

 

 

「は?なんでやねん。お前にはこれまでも旅路のイェンをいっぱいやっとるだろが。」オットーは驚くと関西弁が出る。前○太尊のようだが、単なる思い付きの設定だ。

 

 

「まぁまぁ、話を聞け。「レキネンゾーヨ」(暦年贈与)という愛の話だ。それにこのイェンは俺だけじゃない。パーティ全員にだ。」

 

 

「何を言い出すんだ。それくらいイェンはあるにはあるが、これはワシがオッカーと必死になってリュックに貯めたものだ。それをそのまま渡せだと。お前らにはお前らの旅があるだろう。その旅路で、周りのひとの感謝と信用の証として集まるのがイェンだ。

 

感謝と信用、これ無くしてそう易々と渡すものではない!」

 

ドン!

 

 

 

「ぐっ。この分からず屋!俺はこのスズッキパーティが末長く幸せに旅を続けるために言ってるのに。このままだと、オットーが旅を終えた時にゼーキンをいっぱい取られて、残される俺たちが困るんだぞ!」

 

 

「残される俺たちが困る?サブロゥ、お前なにを言っているんだ?」

 

 

「オットーはイェンよりもフドーサンのほうが多いだろ。でもな。ゼーキンはイェンなんだよ!それも一括だ!一括がムリだったら、たっかい利息払って分割払いでも良いんでって、とにかくイェンだ!それでもムリな時に、やっとフドーサンだ。それくらい、フドーサンだと、なっかなかゼーキンとして認めてくれねぇんだよ!」

 

 

「……。そうなのか…。」

 

 

 

スズッキ家の末永い繁栄のため…?

 

オットーは考えていた。

 

 

一家の末永い繁栄。旅を続けるものにとって至上命題のひとつだ。

オットーにも厳しくも優しい父母がいた。

リュックの中身こそ引継いでいないものの、ゼーキンでも取られない見えない財産をたくさんもらった。

その父母にもまた父母がいて、その前も…。

大きな争いの話を聞き、理不尽に旅を終える者たちをたくさん知った。

 

そうやって命のリレーが繰り返されるのが、この旅路。

 

 

 

 

パーティの末永い繁栄。これは理屈ではないのだ。

 

 

 

「サブロゥの言うことも一理ある。イッチローやジィロゥにはかわいい3列目の子どもたちがいる。この子達が困らないようにしてやるのも、家長の務めなのかも知れない。」

 

しかし、サブロゥの説明には腹落ちしていない部分もあった。

 

 

 

 

「あいつ…。うまいこと言って自分が金欲しいだけなんちゃうんか…。」

 

 

サブロゥが行きつけのお店でホリキタマキ似の美人に入れあげていることは知っている。

そこにイェンが流れるのであれば、それはパーティの繁栄にはならない。

 

「いったい、どうすれば。。。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぅ、スズッキ オットーさん。お困りかい?」バッチがキラリン。

 

 

 

「むむむ、誰だ。君は??」

 

 

 

「ふっ、俺さ。」ティティはにやりと微笑んだ。

 

 

 

 

To be continued…

 

つづきはこちら

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~餅は餅屋に~ 第5話

 

用語解説

・スズッキ家

オットー  …75歳。男性。1列目。リュックははち切れんばかりに重い。

オッカー  …72歳。女性。1列目。軽がるリュック。趣味はおしゃべりと1人カラオケとパチンコ。

イッチロー …45歳。男性。2列目。軽がるリュック。2児の父。

ジィロゥ  …42歳。男性。2列目。不明。

サブロゥ  …35歳。男性。2列目。リュックはそこそこ重い。

 

「レキネンゾーヨ」(暦年贈与)については、こちらをどうぞ。

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~他人のリュックに勝手にものを入れるのは良くない~ 第3話

 

 

 

編集後記

 

少年ジャンプが大好きでした。

青春そのものだったかも知れません。

 

一番好きだったのは「ハイスクール奇面組」です。

あの夢落ちエンドもすべて込みでバイブルです。

 

「ダブルアーツ」という漫画が打ち切りになったことがショックで買うのをやめました。

作者は「ニセコイ」で有名になった古味直志先生。

 

また描いてもらえませんかね?

あれ?なんの話…

 

 

 

 

Follow me!

    この記事を書いた人

    アバター

    塚本 晃行(つかもと てるゆき)

    公認会計士・税理士
    三木市出身、神戸市育ち、西宮市在住の兵庫っ子。
    1980年生まれ。
    大阪梅田で相続税申告・対策メインの税理士・公認会計士のお仕事をしてます。