プロローグ
ここは荒涼とした砂漠。見渡す限り砂ばかり。空には雲ひとつ無い。
晴天の日差しが容赦なく照りつけている。
よく見ると、砂の上にうっすらと矢印「→」の模様が見える。
ここでは何もかもが「→」の方向にしたがって動いているようだ。
「→」はどこから続いているのか分からないし、どこまで続いているのかも見えない。
旅人は白髪頭にたっぷりと汗をかきながら、膨らんだ重そうなリュックを背負って歩いている。
70代後半か80代であろうか。歴史が体中の皺になって刻まれている。
年齢を重ね体力に若干の衰えは見られる。
ただ、鋭い眼光と年齢の割にがっしりした体格からは十分にオーラを感じさせる。
良い出会いと運をものにする不断の努力の結果、旅人は背中に十分すぎる財産を抱えていた。
旅人の横には同年代の伴侶が同じように歩いている。
こちらのリュックはまだ軽そうだ。
その後ろに3人、50代から40代の旅人。
そのうち2人の横にはそれぞれ伴侶がいる。
伴侶のいない旅人のリュックはそれなりに重そうである。
伴侶がいる2組のさらに後ろに子どもたちが見える。
1組目は2人、2組目には1人。
無邪気に遊んで笑っては、前をいく旅人のリュックから何かを取り出して食べている。
2組のリュックは、何かを入れてはすぐに取り出すため軽い。
全体を見ると、1列目に2人、2列目に5人、3列目に3人の合計10人のパーティであった。
かれらはパーティのことを「スズッキ」と名乗った。
すこし脇に目をやると、なにやら旅人とは違う雰囲気の人間がいる。
同じ方向に歩いてはいるものの、周りをきょろきょろと見渡して何かを探しているようだ。
近寄りがたい生理的嫌悪感を漂わせ、粘着質な細い目で旅人の一団を見ることもある。
どうやら監視しているようである。
ある時のこと。
また違う年老いた旅人が、リュックを抱えたまま倒れたことがあった。
自身の旅を終えたらしい。
すると、どこからともなくその監視者が現れ、がさごそとリュックの中身を確認しだした。
そして中身からいくばくかの財産を取り上げ、残ったものを1列目の伴侶と2列目の旅人に渡していた。
取り上げた財産は「ゼーキン」と呼ばれ、広くこの世界のため、すなわち全ての旅人のために役立てられるという。
ただ、あまりにも広すぎて、旅人個人にとって「ゼーキン」が自分の役に立っているという実感はない。
まぁ、そういうものだ。
この世界のルールで、リュックの中身が重いほど、監視者が取り上げる「ゼーキン」も多いようだ。
一方でリュックの中身が一定の基準以下の重さであれば、「ゼーキン」は取り上げない。そもそもあまり興味も示さない。
彼らはその世界の偉人の書かれた紙「イェン」にしかほとんど興味を示さず、「イェン」をまず取り上げて「ゼーキン」としていた。
「イェン」は旅人にとっても、他の物資との交換手段になるため、最も重宝しているものである。
監視者はお揃いの身なりをしており、その腕には「ゼムッショ」と書かれている。
「ゼムッショ」もまた旅人であるが、リュックは重くなさそうだ…。
ここでまた場面は変わる。
同じように年老いた旅人がひとり、旅を終えた。
旅人のリュックも「ゼムッショ」の目に留まるほどには重そうだ。
当然かれらはそのリュックにロックオンしていた。
そして、リュックの中身を見ようかとすぐそこまで迫った時・・・・。
謎の男「ちょっと待ちな!そのリュックに触るんじゃあねぇぞ!」
ゼムッショ「むむむ!貴様、何やつ!?はっ、そのバッチは、、、まさか、、、まさか、、、」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「そう、俺だ。」ティティはにやりと微笑んだ。
To be continued…
つづきはこちら
【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ダイヤモンドは相続財産~ 第2話
-編集後記-
悪ノリで書きはじめました。
こういうほうが伝わるのかな、と思いまして。
反響があれば、また書き足すかもしれませんし、無くても書くかもしれません。。。