【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~最期のラヴ・レター~ 第6話 

前回までのおはなしはこちら

 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ダイヤモンドは相続財産~ 第1話

 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ダイヤモンドは相続財産~ 第2話

 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~他人のリュックに勝手にものを入れるのは良くない~ 第3話

 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~そしてイェンは渡された?~ 第4話

 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~餅は餅屋に~ 第5話

 

 

目次

マ(M)ジでマ(M)ンガ化されたらどうしようなんて杞憂って言葉すらもった(T)いない

 

その日、ティティは眠れなかった。

彼の中でゼーキン(税金)の概念が揺らいでいたからだ。

 

 

「ゼーキン…。俺は今までずっと、広くこの社会を支えるために必要なものだと説明してきた。

ところがどうだ。

最近はゼーキンが社会を支えるためじゃなく、単にモノの価値を抑制するためのものだという意見が聞こえている。

これだと、ゼーキンについて正しく理解してもらおうと思っている俺たちが説明してきたことが、根幹から覆されるようだ。

しかも、この新しい意見にはなぜかとても魅力と説得力がある。

論破出来るチカラは今の俺には無い。

だれかが論破しようとしているのも、心には響かないんだ。

 

一体、何が正しいのだろう。

くっ、分からない……… zzz zzz」

 

 

己を知る

 

 

スズッキ家との関係は良好だ。

 

オットーさん、イッチローさんの協力を得て、既にオットーさんのリュック(財産)の棚卸しはほぼ完了している。

 

イェン、フドーサン、ジョージョーカブ、ホケンキン、ヒジョージョーカブなどなど。

オッカーさんへのメーギヨキン(名義預金)は無さそうだ。

正直ムッとされるくらい確認した。

 

ヒジョージョーカブ(非上場株式)の評価にはとても時間を要した。

そもそもフドーサンがメインの会社だし、

古くからの謎の会計処理やら勘定科目やらが多かった。

 

ここまでリュックの中身を大きくするには、相当な努力と時間が掛かっただろう。

自分の会社へのカシツケキン(貸付金)が〇億イェンあるのは正直イタイが、しょうがない。

(会社のゼーリシさんも、ここまで膨れ上がる前に手を打ってあげれば良いのに。。)

 

とにかく、最初の工程であるリュックの棚卸しは完了した。

 

ラヴレターを書こう

 

次はラヴレターだ。

とびきり心の籠った、ね。

 

ティティはまず、一家の長オットーさんの想いを確認した。

 

大事なのはスズッキ一族の末永い繁栄…。

ところが。

それよりも妻オッカーに対しての深い愛情が最優先事項であることが読み取れた。

 

まずはジヒツ(自筆証書遺言)を

 

「妻オッカーがいなければ、私はここまでのリュック(財産)を持っていない。

リュックの中身はすべてオッカーのものだ。

私が旅を終えた時、リュックの中身はすべて妻オッカーに譲る、と。そうしたい。」

 

彼が一代で蓄えたリュック(財産)だからこその発想だ。

 

「オッケー、分かった、オットーさん。

つまり、奥さんのオッカーさんが一番ハッピーな方法が良いってことだね。

それは素晴らしい。俺もそう言えるように頑張るよ。」

 

 

「よし。まずその想いは、このA4の紙に書いてほしい。

『すべての財産を妻オッカーに相続させる。 〇年〇月〇日 スズッキオットー』

で最後に印鑑だ。認印で良いよ。」

 

「これで良いのか…?」

 

「オッケーさ。

で、この封筒に入れてしっかり封印する。

あとは、

旅終えし時、争いごと裁かれし場において開かれるであろう

って書いて、引出しの中に入れておこう。」

 

「分かった。」

 

やけにあっさりしている。

これには理由があった。

 

そしてコーセイショーショ(公正証書遺言)を

 

「さて、オットーさん。

とりあえずこれで、たった今、あんたが旅を終えたとしても、

希望は叶えられる確率が一気に高まった。

 

ただね、本当のハッピーは奥さんのハッピーなんだろ?

だったらさ、オッカーさんにも気持ちを聞いてみたらどうだろう。

正直、あんたのリュックは大きすぎる。

オッカーさんだって、全部貰ったって持て余しちまうんじゃないかな?」

 

 

「むぅ。なるほど一理ある。分かった。」

オットーさんは素直だ。

息子ほどの年の若者相手であっても、自分には無いものを持っている人間に対してのリスペクトがある。

一流の人は、こういうところが他の人とは違う。

 

 

そして、オッカー。

「う~ん、そりゃ全部は要らないわよねぇ。

イェンはありがたいわね。

ただ、フドーサンとかカブとかカイシャとか管理するのも面倒だわ、要らない。

 

私はね、オットーと一緒に居れたらハッピー。

もしオットーが旅を終えたら、1人で旅を続ける。

それもキツくなってくれば、その後は老人ホームでのんびり。

 

息子のお嫁ちゃんに面倒見てもらうのもイヤだわ。

孫だってみんなカワイイけどね、ずっと一緒はムリ。

たまに会いに来てくれた時に、お小遣いを渡せればそれでいいわ。

私はね、たまの贅沢といってもカラオケ行くくらいだし。

あ、でもそうね、そういえばさ……」

 

オッカーは止まらない。

途中、ティティはタベミカコに領収書をダメ出しされる妄想から帰ってくるまで、少し時間を要した

だが、大事な話を聞き漏らしてはいないはずだ。

 

 

半日、話を聞いてそのエッセンスを抽出した。

「な、オットーさん、言った通りだろ。」

 

「むぅ。」

 

 

オッカーさんの希望は、1人でも困らないだけの最低限のイェンだ。

あとは貰っても困る。

 

 

そうしてティティはラヴレターの形を作っていった。

 

オットーのリュックの中身のうち、

イェンをメインに3割程度がオッカー、

残り7割を3人の息子に。

 

ホントはもう少しオッカーが受継ぐ方がゼーキンはお得かも知れない。

だが、ここに当事者以外の意向を入れてはならない

ゼーリシはリュック(財産)とゼーキンについての正確な情報をお届けするのみ

決めるのはお客さまなのだ。

 

ラヴレターの大事なところ(付言事項)

 

 

そして。

ラヴレターの一番大事な部分「付言事項」だ。

 

「さて、オットーさん。ここがいちばん大事なところさ。

自由にあんたの思うところ、心のうちをしたためるといい。

あくまで俺の経験だがね、ここに自分の想いをストレートに書くとさ、

どんな内容だったとしても、ホントに旅を終えた後の手続が円満に行くんだ。」

 

「うむ。」

 

こうして、ラヴレターまで作り終えた。

引出しに入れた最初の紙は、ややこしくなるので破り捨てた。

 

 

ティティの想い

 

 

「良し。着実に進んでいるぞ。

これで、「現状認識」と「分割」まで終わった。

しっかりみんなにも想いの部分を説明したから、サブロゥさんだって揉めたりはしないだろう。

家庭円満、ハッピーだ。

 

だが、まだだ。

これで終わりじゃない。

ゼーキンをイェンで払えるかの「納税」

そしてサブロゥさんも言っていた「節税」がある。

 

また、ここからさらに「攻めの対策」も場合によっては必要だろう。

カシツケキン(貸付金)の処理にもメスを入れなければなるまいな。

 

 

すべてを、全力で対応しよう…。 zzz…zzz」

 

 

 

ティティもまた旅人である。

 

彼には、他のゼーリシがほとんど持たない特殊な能力がある。

あまねく旅人に対しての、共感するチカラだ。

 

共感して寄り添う。

その分1人ひとりにかなりの時間を掛ける。

 

だから、大人数には対応出来ない。

そういうものだ、きっとそれでいいのだ。

 

 

 

To be continued…

 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ゼムッショとの闘い~ 第7話

 

合わせて読んでみてください。

相続対策、基本のキ!税金減らす(節税)のは最後なのよ。。

 

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この記事を書いたひと

塚本 晃行(つかもと てるゆき)
塚本 晃行(つかもと てるゆき)公認会計士・税理士
三木市出身、神戸市育ち、西宮市在住の兵庫っ子。
1980年生まれ。
大阪梅田で相続税申告・対策メインの税理士・公認会計士のお仕事をしてます。