【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~伝家の宝刀通達6項~ 第9話

※この物語はフィクションです。なんなら異世界のハナシです。

実在のものとはいっさい関係ございません。また、効果には個人差があります。

 

旅路を美しく終えるためにまもってほしいこと。

 

  1. 1億円以上の財産があるのに、相続税をゼロ円におさえる。
  2. 相続税の申告期限までに収益不動産を売却
  3. 90歳を過ぎるような高齢での投資用不動産の購入
  4. 相続対策のためだけに借金をする
  5. 4分の1を超える財産圧縮(売却額が路線価評価の4倍以上になる)※マストではない

 


 

 

「むむむ。これはちょっとなぁ。」

 

ティティは顔を曇らせた。

この兆候は危険だ。

 

目次

ルールで決めるか判断に委ねるか、それが問題だ

 

美しいものはブレない。普遍的なものだ。

 

ルールは確固たるものであり、揺るがないからこそ美しい。

某国のように感情優先でルールが左右されるような事態だけは避けねばならんのだ。

 


 

ゼムッショには伝家の宝刀がある。

「ザイサンヒョーカキホンツータツ6コウ!(財産評価基本通達6項)」

ドドン!

「オマエ、ソレ安スギ、ダメ。オレ、シラベタ、コッチツカエ」

 

旅人のリュックの中身は「時価」で値段を決めるのがルール。

ところが「時価」ってむずかしい。

だから客観的・簡便的な算定基準「ロセンカ」を設けた。

それと一緒に生み出されたのが、この伝家の宝刀「6コウ」だ。

「時価」はルールだがそれ以外はルールではない、どっちか判断するものだ。

 


 

「あれはやりすぎ」「そりゃ悪質だろ」

そんな声が聞こえる。ティティもそう思う

明らかに今回の旅人はやり過ぎていた。

美学と合理性がない、税金を払いたくない一心だった、というのが客観的な見方であろう。

 

 

 

これは看過できない・・・。

だからゼムッショもこの伝家の宝刀「通達6項」を抜かざるを得なかった。

 

 

 

だがしかし。

抜刀についてのルールがきちんと定まっていないことが問題なのだ。

 

 

旅人の大事なお金を取り上げることのできるチカラを持つものは、そのチカラをむやみやたらに振り回してはならない。

だからルールで決められた通りにしか、そのチカラを使ってはいけないのだ。

旅人ごとの対応で恣意性を認めるべきでは無い。

 

 

 

それでも、現実はちがう。

 

現時点でのラインを引く

 

抜刀されないためのラインだ。

超えれば不運(ハードラック)と踊(ダンス)っちまうことになる。

 

ティティもきっぱりと断るだろう。

 

相続人がイマダミオ似であったとしてもだ。

カレシで武丸みたいなのが出てきたらどうするのだ。

 

1位:相続税をゼロ円に抑える

 

財産だけだと1億円を超えるのに債務の差引きで相続財産が低くなっているときは、注意が必要だ。

不動産を購入すれば、その評価圧縮により税金が課される相続財産の金額は下がる。

さらに借入金を用いれば、その分は債務控除の対象となる。

これが基礎控除額のバーを下回れば、税金は掛からない(ゼロ円に)ことになる。

 

しかしね、明らかに財産がありながら税金をゼロ円にしてしまうのはやはり不自然だ。

 

2位:相続発生後から申告期限までに収益不動産を売却

 

これも極めて危険だ。

ティティがリュックの中身を確認する。

相続税の申告をゼムッショにするためだ。

 

その時すでに収益不動産を売却していたらどうだろう。

売った値段にもよるが、やっぱり不自然である。

相続税での用が済んだのでさっさとお金に変えてしまおう、と思われてしまうだろう。

ティティもそう思うのだから。

 

相続税の申告のあと税務調査が来るまでに売却しているケースもある。

この場合もある程度、納得できる説明が必要であろう。

 

 

このツートップは特に危険だ。

どっちかひとつでもダメ、合わせ技だと袈裟懸けにバッサリ切られてしまうだろう。

 

3位:90歳過ぎて収益不動産を購入

80歳でも厳しいが、90歳超えの旅人はかなり不自然だ。

本人の意思能力がどこまであるかも疑わしい。

 

90歳を超えて不動産投資をするか?

手持ちのお金で十二分に暮らしていけるだろうに、なんでこんなことをするのだ?

ティティもそう思うのだから。

 

4位:相続対策のための借金

主目的が不動産投資で、副次的に相続対策の効果があるのはべつにかまわない。

ところが主目的が相続対策ではダメだ。美しくない。

借金には審査がある。

審査のときに「ワイ相続対策でカネ借りますねん。」と言ってはいけないのだ。

 

5位:4分の1を超える財産圧縮

その財産の「時価」を考えて、路線価評価と売却額か6コウ(プロの見立てた時価)の価格に4倍以上の開きがあると注意が必要だ。

路線価評価が3,000万円で相続開始後に売った値段が1億5,000万円などであれば注意である。

 

買ったときの値段が高いほうが財産の圧縮効果は高くなる。

当然だがその分利回りは悪くなり、不動産投資としての魅力は減る。

それでも購入する合理性はあるのだろうか。

 

ただ、そのあたりは世界の経済状況などにも左右されるため、かならずしも不動産の時価とロセンカの差が4倍をさらに超えていても、それだけでダメとは言われにくいだろう。

タワーマンションなど、買ったときの値段からロセンカでの評価額が4分の1になるものなどザラにある。

これらすべてが否定されるわけではないのだ。

マイホームとして買うことだって多い。

 

おそらく抜刀のきっかけが、財産圧縮で4分の1、というところでは無いだろうとは見ている。

 

 

そして、まとめ

 

大事なことなのでもう一度。これだけは守ってほしい。

 

  1. 1億円以上の財産があるのに、相続税をゼロ円におさえる。
  2. 相続税の申告期限までに収益不動産を売却
  3. 90歳を過ぎるような高齢での投資用不動産の購入
  4. 相続対策のためだけに借金をする
  5. 4分の1を超える財産圧縮(売却額が路線価評価の4倍以上になる)

 

伝家の宝刀はあっても良い

ないとホントに節操のない旅人も出てくるからな。

 

でもやっぱり、そもそも時価を画一的に算定するのが大変だからこそのロセンカ。

それを後からぶった切るんだぜ。

その抜刀の基準はほしいよな。

 

ノブナガの円(半径4m。つーかこれが限界)みたいにね、これを超えたら切る!といってもらいたいです。

 

 

To be continued…

 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~そして伝説へ~ 第10話

 

前回までの話はこちら

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ダイヤモンドは相続財産~ 第1話

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ダイヤモンドは相続財産~ 第2話

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~他人のリュックに勝手にものを入れるのは良くない~ 第3話

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~そしてイェンは渡された?~ 第4話

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~餅は餅屋に~ 第5話

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~最期のラヴ・レター~ 第6話 

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~ゼムッショとの闘い~ 第7話

【遺産相続冒険譚】ティティの奇妙な冒険 ~暦年贈与は300万円~ 第8話

 

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この記事を書いたひと

塚本 晃行(つかもと てるゆき)
塚本 晃行(つかもと てるゆき)公認会計士・税理士
三木市出身、神戸市育ち、西宮市在住の兵庫っ子。
1980年生まれ。
大阪梅田で相続税申告・対策メインの税理士・公認会計士のお仕事をしてます。