暦年贈与と並んで、効果的な節税の方法になります。
お金持ちの親は惜しみなく子・孫の生活費や教育費を出す。
子・孫は恥ずかしがらずに親から生活費や教育費を受け取る。
わたしのお客さまでも、このようにされてる方が居ます。
子どもといっても40代、孫は小学生くらいですが、日々の生活費はほとんど80代の親が負担しているケースです。
孫のスマホ代も負担されてます。
子、孫への生活費や教育費の都度贈与は非課税
贈与税は、「扶養義務者」からの「通常必要」な「生活費や教育費」については掛かりません。
もしここに課税されるようになれば、子どもは親が出してくれた生活費や教育費に毎年贈与税を支払うか、返済をしていかなければならないことになります。
そんなバカな話、だれも納得しません。
なので、ちゃんと税法で非課税ですよ、と定められています。
「扶養義務者」の範囲
「扶養義務者」とは、夫婦・親子・孫・兄弟姉妹などを指します。
対象は「生活費や教育費」。貯金ダメ投資ダメ遊びダメ
「生活費」とは、通常の日常生活に必要な費用のこと。
生活に通常必要なものに限られますので、そのお金を貯金したり株式投資などに回したりしては非課税とはなりません。
クルマに関しては、ケースバイケースかと思われます。
あくまで私見ですが、地方都市で電車などの交通網が少なく車社会である場合に、一般的な「通勤用自動車」程度は認められるのではないでしょうか。
※贈与税の範囲に明文の規定はありません。譲渡所得税の非課税財産(生活に通常必要な動産として)に「通勤用自動車」が認められていることからの準用になります。
「教育費」とは、学費や教材費・文具費のことです。
こちらは広く教育のためであれば認められるものになります。
学校教育のほか、塾、ピアノ教室、サッカー教室など。
海外留学も大事な教育の一環ですので、認められます。
ただ、海外留学と称して現地で遊びに使ってしまったら、厳密にいえば非課税とはなりません。
「通常必要」の意味
「通常必要な」とは、その人(もらう人)の社会的な地位や状況などを総合的に勘案して、常識的な範囲であることをいいます。
「まぁこれくらいならリーズナブルだよね」というのは人それぞれですので、このような表現になってます。
この点、最終的には税務署の判断に委ねられています。
ただ、支払いの説明が出来て、よほど悪質で目立つようなことが無ければ「通常必要な」ものとして認められると思います。
後述しますが、「○○費と称して」などの意図は、通帳を見ればわりとすぐに見抜かれてしまうと思われますので、止めたほうが良いでしょう。
目次
生活費の負担で相続財産が減り、子どもは納税資金が貯められる
親は子どもや孫の生活費・教育費の面倒を見ることで、通常よりもお金が多く減ることになります。
お金は減りますが、本来であれば子どもか孫が負担しなければいけないお金ですので、決してムダなお金ではありません。
それどころか、
- 将来の相続財産を減らすことで相続税を減らすことができ、
- 子ども世代は支出を抑えられて手元のお金が増え、
- 教育にお金を掛ければその人も豊かになる可能性が高くなる
と、一石三鳥となります。
まとめてドンとではダメ。必要な都度、直接支払うべし。
この費用は、必要な都度、直接支払うものに限り非課税となります。
- 孫の小学校の学費が6年間で1,000万円掛かるので、まとめて渡しておく ×
- 息子家族の生活費が1年間で200万円程度掛かるので、年初にまとめて渡しておく ×
この時、その年分で実際に掛かった分との差額は、贈与税の対象となります。
贈与者が亡くなった時には、残額は名義財産として相続財産の対象になることもあります。
また亡くなる3年内であれば、相続財産に加算されてしまうことにも注意が必要です。
- 孫の小学校の学費1年分を子ども(所得あり)の口座に振込む △
子どもの口座に振込むのもオススメではありません。
孫の学費に充当されていることが紐付けできれば良いですが、それでも「直接」ではなく「間接」的な贈与ととられてしまう可能性があるためです。
実務上は、子ども(所得あり)が一旦、孫の教育費を支払って、後で親(祖父)から清算する、ということも多いかと思います。
この場合でも、あくまでも親(祖父)から孫の教育機関への直接の支払いが原則であるため、支払いの紐付けがしっかり確認できるようにしておく必要があります。
「○○費と称して」や「○○代に乗じて」はダメ。当たり前ですが。
通常必要と認められるものに限り非課税となります。
そのため、
- 生活費と称して10万円のところを20万円渡す ×
- 孫の入学金120万円を渡すのに乗じて300万円渡す ×
この時、本来掛かった分(生活費の10万円、入学金の120万円)以外は贈与税の対象となります。
贈与税の非課税枠110万円を超えれば税金が掛かります。
「教育資金贈与信託」とどっちが向いているかを検討
教育費の贈与については、信託銀行の「教育資金贈与信託」もあり、どちらも効果は同じです。
大きな違いとして、教育資金贈与信託は将来発生するであろう教育費を1,500万円まで「まとめて一括で」贈与しても非課税になります。
以下、どちらの制度を活用されるのが良いかをまとめました。
「都度、贈与」が向いている人
- 自分のお金もちょっと不安
- その都度、愛情を感じてほしい
- 支払いの作業が苦にならない
- まだまだ若くて元気
まとめて「教育資金贈与信託」が向いている人
- 自分のお金の心配はそこまでしていない
- 早急に相続税対策をする必要がある
- 支払処理などこまごました作業が面倒くさい
「教育資金贈与信託」については改正論点もあります。
こちらも読んでみてください。
【税制改正】教育資金贈与信託の使い方にちょっと待った!23歳以上に厳しく、3年内贈与加算の対象にもなるかも。
国税庁HP参考