大事なことなので冒頭に。
税理士として積極的に遺産分割協議に関与することはありません。
非弁行為になりますし、何より後々のトラブルを招きかねませんので。
分割の判断材料としてシミュレーションによる税額の提示はしますが、最終的には相続人同士で決めて頂いてます。
その後、決定した分割内容を書面にしたものをお渡ししております。
その点を踏まえてご興味があれば、読んでみてください。
相続手続きに欠かせないものとして、遺産を分けるための「遺産分割協議書」があります。
相続税申告のお手伝いをする際にも、相続人が1人で無く遺言書も無い場合は「遺産分割協議書」と印鑑証明書が添付書類として必要になります。
ところが実は、もう少し使い勝手の良いものがありましたのでご紹介します。
「遺産分割協議証明書」です。
「遺産分割協議書」と「遺産分割協議証明書」
「遺産分割協議書」は、1つの書面に共同相続人全員が署名と実印を押して作成します。
一方「遺産分割協議証明書」は、各相続人がそれぞれ同じ書面に署名と実印を押して、それを1つに集めるのです。
記載内容はほぼ同じです。
相違点は以下の3点かと。
- 題名は「遺産分割協議証明書」
- 「相続人全員で遺産分割協議を行った結果、下記(上記)の通り遺産分割が成立したことを証明する」の旨の文言(書き方はいろいろあるかと思います。)
- 署名押印は1人分のみ
相続手続きでこんな時に使うと便利
①相続人が多数・遠方
相続人が多数居て、島根・大阪・東京・北海道など遠方に散らばっている場合、全員が1ヶ所に集まるのは困難なことが多いでしょう。
「遺産分割協議書」であれば、持ち回りで1つの協議書を渡していくことになります。
郵送でやり取りするにしても、手間も時間も掛かります。
また、途中で紛失や書き損じ・破損などのリスクもあります。
その点、「遺産分割協議証明書」であれば、代表相続人からそれぞれの相続人に直接送って、返送してもらえれば手続きが済むことになります。
手間と時間が短縮され、紛失などのリスクも軽減できます。
これは相続人の数が多ければ多いほど効果を発揮します。
②相続人の仲が悪い
実際にわたしが携わったのがこのケースでした。
司法書士を通じて相続人間の分割内容についてはまとまっていたものの、異母兄弟だった相続人同士の仲が悪く、
「お互いの住所・連絡先などを知られたくないし、知りたくもない」と。
そこで、司法書士さんに「遺産分割協議証明書」を作成してもらって、それぞれから集めました。
ちなみに余談ですが、その時は相続税申告書も全て相続人ごとに1表を印刷(税務ソフトMJSにはその機能がありました)し、それぞれ作成いたしました。控えの製本も全部1冊ずつ。大変でしたけど良い経験になりました。
その相続人同士が、実は割と近くに住んでおられたのも印象的でした。
注意点も
遺産分割協議が整っていることが前提(相続人の仲が悪いとき)
本来は相続人同士がきちんと話し合って合意したうえで、分割協議を行うことが望まれます。
ですが前述のように仲が悪かったりする場合は、そもそも当事者同士のみで協議を行うことが難しいことがあります。
こんな時に分割協議が整っていないにも関わらず、遺産分割協議証明書だけ送られてきたとしたら。「なんやこれ?!」と、余計にこじれる可能性もありますので、注意が必要です。
そのため、あくまでも「遺産分割協議証明書」は遺産分割協議がきちんと整っていることが前提になります。
分割協議証明書の日付は相続税の申告期限より前の日
証明書の日付については、ある程度の範囲内で揃えておくほうが無難かと。
多少ズレていても税務署は何も言わないと思います。
実際にわたしの携わったケースでも日付はすこし違ってましたが、その点につき税務署からは何も言われませんでした。
ただし注意点があります。
相続税の申告期限を越えない日にする、ということです。
(くどいですが、あくまでも分割協議自体は申告期限内に整っている前提)
申告期限ギリギリの案件の場合など、
実務上は今手元に揃っている最低限の資料のみで税務署に提出することもあり得ます。
不足分については別紙に列挙しておき揃い次第速やかに提出する、という風にします。
そんな時に、相続人のうち1人だけ分割協議証明書が遅れてしまった場合は注意しましょう。小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減などの優遇措置は、未分割を除き、期限内の分割が要件です。
(今までそんな経験はありませんでしたが、念のため。)