うつ病や統合失調症などの精神病だと相続税・贈与税が安くなります

先行きが不安なこのご時勢、嫌なことを考えさせられることも多くなって、こころの病になる方も増えているようです。

精神病院に行き、そこでうつ病や統合失調症と診断される方も多いのではないでしょうか。

最近では、お笑いトリオ・ネプチューンの名倉潤さんが頚椎ヘルニアの手術後の侵襲でうつ病を発症したことを公表されています。

うつの原因は本当にさまざまあるようですね。

 

うつ病などの精神障害をわずらうと、まともに働けなくなるため所得は減ります。

結果的に生活に困窮することも多いでしょう。

それは本人のみならず面倒を見ることになる親、兄弟などの親族も同様です。

 

そこで国としては、うつ病などの精神障害者(身体障害者にも)に対して、さまざまな税金の優遇措置を設けています。

ここではうつ病などの精神障害者に対しての相続税の優遇措置について解説します。

 

相続税の障害者控除

相続人が障害者であるときは、その障害者の年齢と障害の程度に応じて一定額が相続税額から差し引かれます。

適用要件

基本的には日本に住んでいる85歳未満の法定相続人が障害者であれば控除が可能です。

いくら控除される

一般障害者と特別障害に分けられ、相続開始時の相続人の年齢によって変わります。

一般障害者の場合

(85歳ー障害者の年齢) × 10万円

※年齢の1年未満は切捨て

特別障害者の場合

(85歳ー障害者の年齢) × 20万円

※年齢の1年未満は切捨て

 

一般か特別かの判別

一般障害者(精神障害者手帳2級・3級)

①精神科医の判定で知的障害者と認定された者

②精神障害者手帳の等級が2級か3級の者

③排せつ等の日常生活に支障のある寝たきりのままの方で①に準ずる者として市町村等の認定を受けている者

④65歳以上でも障害の程度が①に準ずる者として市町村等の認定を受けている者

特別障害者(精神障害者手帳1級)

①心神喪失または精神科医の判定で重度の知的障害者と認定された者

②精神障害者手帳の等級が1級の者

③排せつ等の日常生活に支障のある寝たきりのままの方で精神に重度の障害がある者

④65歳以上でも障害の程度が①に準ずる者として市町村等の認定を受けている者

障害者手帳が無くっても諦めない

相続開始時に障害者手帳の交付を受けていなくとも、次の要件を全て満たせば障害者控除の適用ができます。

①相続税申告書を申告期限内に提出する時に、手帳の交付を受けているか、交付申請中であること

②医師の診断で、相続開始時の現況において明らかに障害者手帳の交付を受ける程度の障害があること

 

控除される額が自分の相続税より多いときは

障害者控除額 > 障害者である相続人本人の相続税額 のときはどうなるのでしょうか。

安心してください。その者の扶養義務者(つまり他の相続人)の相続税額からも差し引けます。

相続人が複数いる場合に差し引ける金額はそれぞれ自由に設定できます。

平等に控除しても良いし、障害者への扶養貢献割合などによって調整することもできます。

 

具体例

亡くなった人 甲(Aの父)

相続人A(統合失調症で精神障害者手帳2級) 45歳

相続税額300万円

他に相続人B(Aの妹)、C(Aの弟)の2人

それぞれ相続税額200万円、障害者控除の残額は平等に控除

 

障害者控除

(85歳-45歳) × 10万円(一般) = 400万円

 

相続税額

相続人A

300万円 - 400万円 = ー100万円  ∴ 0円

相続人B・C

200万円 -  50万円 =  150万円 ずつ

 

以前、障害者控除を受けたことがある場合は要注意

2回以上相続を経験された場合は、前回の相続時に控除をした分については今回は差し引けません

その控除額は、①「最初の相続時に計算した障害者控除額の枠から実際に控除した額」か、②「今回の障害者控除額の枠」のどちらか低い方になります。

よくあるのは二次相続時です。

上記の例の5年前にAの母乙が亡くなった場合を考えてみましょう。

 

一時相続

亡くなった人 乙(Aの母)

相続人A(統合失調症で精神障害者手帳2級) 40歳

相続税額 60万円

他に相続人B(Aの妹)、C(Aの弟)の2人

それぞれ相続税額60万円

乙の配偶者甲は財産を相続しない

 

障害者控除

(85歳-40歳) × 10万円(一般) = 450万円

 

相続税額

相続人A

60万円 - 450万円 = ー390万円  ∴ 0円

相続人B・C

60万円 - 390万円 = ー330万円  ∴ 0円 2人とも

 

となり一時相続時はA・B・Cの3人とも相続税はゼロ円になります。

①「最初の相続時に計算した障害者控除額の枠から実際に控除した額」は、

450万円 - 180万円(A・B・Cの控除合計) = 270 万円の枠が残りました。

二次相続

亡くなった人 甲(Aの父)

相続人A(統合失調症で精神障害者手帳2級) 45歳

相続税額300万円

他に相続人B(Aの妹)、C(Aの弟)の2人

それぞれ相続税額200万円ずつ

 

障害者控除

①「最初の相続時に計算した障害者控除額の枠から実際に控除した額」

270万円 (一時相続 参照)

②「今回の障害者控除額の枠」

(85歳-45歳) × 10万円(一般) = 400万円

①<② なので、控除の上限は 270万円

 

相続税額

相続人A

300万円 - 270万円 = 30万円

相続人B・C

200万円 ずつ(控除なし)

 

となります。

 

相続争いでうつ病になった!ではダメ

遺産分割協議がなかなかまとまらず、相続人間での人間関係が嫌になりストレスを感じるかたも多いと思います。

私も未分割の相続税申告をしたことがありますが、やはり相続人の抱えるストレスは相当なものだと感じました。

その結果、考えすぎてうつ病になってしまった場合はどうなるのでしょうか。

結論は題名にもありますが、この場合は相続税の障害者控除は受けられません。

あくまでも、被相続人が亡くなった日時点での現況がどうであったか、で判断することになります。

 

 

贈与税の障害者控除

 

こちらで記事にしています。

特定贈与信託とは?障害者の贈与税の特例について。

 

障害年金とは別の話なので社労士等の専門家へ

その他、所得税でも税の優遇措置は受けられますが、税金の優遇措置は国に払う分が減額されるものになりお金が入ってくるわけではありません。

お金が入ってくる制度には社会保障の枠組みで障害年金があります。

この制度は日本年金機構などが管轄しているものであり、税務署などの税金とは別のものになります。

 

うつ病やアルコール依存症などでも障害年金はもらえる可能性があるため、一度、専門家にご相談されてみるのも良いでしょう。

障害年金の受給専門の社労士をお探しの方はこちら。

うつ病等精神疾患での障害年金の申請相談 二宮社会保険労務士事務所

 

 

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    この記事を書いた人

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    塚本 晃行(つかもと てるゆき)

    公認会計士・税理士
    三木市出身、神戸市育ち、西宮市在住の兵庫っ子。
    1980年生まれ。
    大阪梅田で相続税申告・対策メインの税理士・公認会計士のお仕事をしてます。