おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)は相続対策△ 感謝の印○ です。

今回は、贈与税の特例のひとつ、通称「おしどり贈与」について解説します。

 

因みに贈与税の申告期間は毎年2月1日から3月15日までで、所得税の申告期間(毎年2月15日から3月15日まで)よりも少し前倒しで申告と納税が可能です。税務署が混みはじめる前に済ませてしまいたいものですね。

2019年の申告期間は、

所得税:2月18日(月)から3月15日(金)

贈与税:2月1日  (木)から3月15日(金) となっております。

 

おしどり贈与とは?

「おしどり贈与」とは、マイホームやマイホーム取得のための資金の夫婦間の贈与の際の贈与税の配偶者控除のことです。

後述しますが、要件の一つに婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与というのがあるため、通称「おしどり贈与」といわれています。

この特例で最高で2,000万円分まで贈与税が非課税になります。

さらに、贈与税の基礎控除110万円と合わせて2,110万円まで非課税になります。

 

ここで「そもそも夫婦間なのになんで贈与税が掛かるねん?夫婦2人全て共有のものじゃないの??」という疑問があります。

ただ、税法の世界では、夫婦であってもそれぞれ別個のものとして、どちらが稼いだか(得たか)によってその財産の帰属が決まります。

そのため、夫婦間でも金銭的価値のあるものののやりとりは贈与となります。

 

そうは言っても、夫婦2人で築き上げた財産という考え方への配慮等もあって、「おしどり贈与」といった税制上の特例措置があるわけです。

 

どういうメリットがあるの?

2,110万円まで非課税

前述のように2,110万円までなら贈与税が非課税になる、というのがメリットのひとつです。

特例を使わず奥さまに2,110万円の現金をあげれば、750万円の贈与税を国に支払わなければならないところが、贈与税が0円になるわけです。

相続開始前3年内の相続財産に加算されない

贈与した人が財産をあげた日から3年以内に亡くなった場合、通常その贈与は無かったことにされ、相続財産に足し戻しされます。

これは、余命宣告を受けるなどで自分の死期を悟った方が積極的に生前贈与をして、過度な相続税の節税をすることを防ぐための規定になります。

 

この論点は、特に税務調査で突かれることも多く注意が必要です。

預金通帳をしっかり見ない税理士はダメ!税務署も100%見ます。

 

ところが、「おしどり贈与」であれば、この相続財産への足し戻しがありません。

そのため極端な話、亡くなる直前であっても贈与が成立していれば、その分の相続財産を減らすことは出来ます。

デメリットが多い、、、

2,110万円まで贈与税が掛からずに財産移転が出来ることは出来ます。

ただし、、、、その税額軽減効果は極めて限定的です。

しかも、手続きに伴う登記や税務申告や税金など追加の諸費用が掛かってきます。

また、亡くなる順番はコントロール出来るものではなく、贈与した配偶者に先立たれることもあります。そうなってしまっては何の意味も無いどころか、諸費用分損した、ということにもなり得ます。

 

配偶者はそもそも優遇されている

相続税の計算上、相続する財産のうち法定相続分か1億6,000万円までであれば、配偶者に相続税は掛かりません。

配偶者に相続税が発生するケースは実務上は少ないといえます。

自宅はそもそも優遇されている

マイホームであれば、「小規模宅地等の特例」を使って最大80%引の評価をすることが出来ます。

この規定は相続税だけで、贈与税においては認められていません。

また、配偶者が自宅を引継いでこの規定を適用する場合は居住要件もありませんので、相続開始後すぐにでも売却して現金化することも可能です。

相続税はそもそも優遇されている

相続税は贈与税より税率が安く設計されています。これは贈与税が相続税逃れをカバーする目的のための税金であるためです。

また、基礎控除というバー(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり、バーを超えない限りはそもそも相続税が課されません。

ほかの税金は掛かる(不動産取得税・登録免許税)

不動産取得税は相続による取得の場合は非課税です。

「おしどり贈与」での贈与の場合は、固定資産税評価額の3%(1.5%)程度の税金が掛かります。

登録免許税は、相続時で0.4%のところ、贈与の場合は2%と5倍になります。

ほかの諸費用が掛かる(税理士・司法書士等)

贈与税申告を税理士に依頼する場合は、税理士報酬が掛かります。

この規定では、2,110万円以内の贈与で贈与税が掛からなかったとしても申告は必須となります。

また、不動産登記を司法書士に依頼する場合も、司法書士の報酬が掛かります。

 

実際どんなケースが多い?

節税のために、との思いでこの特例を使うのは実際はかなり限られた場面になります。

それよりもこの特例を使って一番効果的なのは、夫婦間での日ごろの「感謝」を伝えるためのものとしての使われ方が一番しっくり来ると思います。

長年連れ添ってくれた奥さまへの感謝の証として、誕生日や結婚記念日にマイホームをプレゼントするわけです。

この規定は持分の贈与でも出来ますので、例えば家の土地と建物の名義を1/2ずつ贈与する、といったことも可能です。

自宅が相続財産の分割対象になる場合においては、自分の住む家を追われてしまう可能性もあり得るため、生前から住む家を確保しておいてあげる、というのも感謝の形といえますね。

 

実行する場合は?

要件

(1)夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと

法的な要件が求められますので、事実婚などではダメです。役所に届出た婚姻日からの起算になります。

また、同じ婚姻関係の配偶者からは人生で1回だけの適用になります。

(2)配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること

家(戸建でもマンションでも可)そのものか、家を買うためのお金の贈与であることが要件になります。

(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した 居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

出典:国税庁HPタックスアンサーNo.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

家といっても投資目的の収益物件や別荘などではダメで、自分が住むための家である必要があります。また、当たり前ですが、そこに遅滞なく、ちゃんと住んでいるという実態を伴わなければいけません。

まとめ

節税のためにこの規定を使用するのはデメリットも多く危険といえます。

奥さまへの日ごろの感謝や愛情を上手く表現するための大人のツール、と考えてみてはいかがでしょうか。

 

大人のツール、としての規定の使用を考えておられる方のご相談をお待ちしております。

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この記事を書いたひと

塚本 晃行(つかもと てるゆき)
塚本 晃行(つかもと てるゆき)公認会計士・税理士
三木市出身、神戸市育ち、西宮市在住の兵庫っ子。
1980年生まれ。
大阪梅田で相続税申告・対策メインの税理士・公認会計士のお仕事をしてます。