生前贈与の落とし穴。特定口座の株式贈与の注意点。

相続対策の王道であり、長期間続けることで大きな効果を生むのが、生前贈与。暦年贈与であれば、年間110万円まで非課税で財産移転が可能です。

私も富裕層のお客様には、積極的に子や孫に生前贈与することをすすめています。

贈与するものは、現金以外にも不動産や株式・投資信託等、いろいろと可能ですが、上場株式を贈与する際には少し注意する必要があります。

 

目次

生前贈与で上場株式を渡す時の注意点

 

結論から述べますが、上場株式の贈与の注意点は、「同一銘柄であれば、特定口座への贈与は1回しか出来ない」ということです。

上場オーナーの方など、同一銘柄の株式を特定口座内で大量に保有しており、それを子や孫に暦年で生前贈与していく際などには、特に注意が必要になります。

 

具体的にどういうこと?

 

Aという銘柄(時価@1千円、取得費@500円)の上場株式を特定口座で100万株保有している資産家の方を想定します。

暦年贈与で資産家の子(A株式保有無し)に毎年1千株ずつ贈与しようとすると、1回目は特定口座で受入れれますが、2回目以降は、最初に贈与した分が残っているため一般口座での受入れとなってしまいます。

 

特定口座に株式を受入れれないと何が困るの?

 

「特定口座」とは、源泉徴収ありを選択することで、証券会社の方で税金を納めてくれる制度になります。

そのため、わざわざ確定申告をする必要がありません。

確定申告は税理士など税金に明るい人であればまだしも(税理士でも嫌ですが。。)普通はかなり面倒くさい手続きであり、これをしなくて済むメリットというのはとても大きいかと思います。

 

特定口座でない口座を「一般口座」といいますが、一般口座の場合は株式を売った時の税金計算を自分でして、確定申告と納税をしなければなりません。

その時は、各銘柄の取得価額をしっかりと覚えておかなければならず、時間がたてば経つほど、手続きが煩雑になってきてしまいます。

 

次年度以降に、同一銘柄の株式を贈与するとどうなるの?

 

次年度以降に同一銘柄の株式を贈与しようとすると、その株式を保有している場合は特定口座では受入れが出来ないため、一般口座預かりになってしまいます。ちなみに一度でも一般口座で受入れた銘柄については、その後に特定口座への移管は出来ません。

そうすると、将来に売却する時の取得費の金額が証券会社に記録されないため、自分で覚えておく必要があります。さらに、売却時には確定申告をする必要が出てきます。

 

特定口座で受入れた株式を、次の贈与までに全て売却しておけば、また新たに特定口座に受入れることは可能ですが、あまり株式を売りたくないタイミングであったり、そもそも売るつもりが無い場合なども考えられます。

 

いろんな証券会社に口座開設しておくと便利か?

 

特定口座は証券会社ごとに管理しているため、日本国内で開設できる証券会社を複数開設しておけば、その口座分だけは、特定口座で受入れることは可能です。

ただそれも、株式などの金融商品に明るい方ならまだしも、一般の方が特定口座を使いたいがために、複数証券会社の口座を持つというのも現実的な選択とはいえないでしょう。

 

それでも株式の贈与はメリットも大きい

 

上場株式の贈与税の評価額は以下の様に計算されます。

①贈与日の終値

②贈与した月、その前月、またはその前々月の終値平均値

のいずれか低い方の価額

相場にも寄りますが、通常は時価よりも安い評価となり、現金の贈与よりも有利になります。

また、贈与後の配当金が贈与した人に果実としてついてくるため、出来るだけ高配当の銘柄を贈与すると、生前贈与のメリットをより多く享受できます。

 

 

 

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この記事を書いたひと

塚本 晃行(つかもと てるゆき)
塚本 晃行(つかもと てるゆき)公認会計士・税理士
三木市出身、神戸市育ち、西宮市在住の兵庫っ子。
1980年生まれ。
大阪梅田で相続税申告・対策メインの税理士・公認会計士のお仕事をしてます。