亡くなられた方が生前、社会貢献に興味があり、遺言書で認定NPO法人などに相続財産を遺贈することや、相続人が受取った相続財産を自主的にそういった団体に寄付されることなどがあります。
その場合一定の要件を満たせば、相続税や所得税の優遇措置を受けることができます。
相続税の非課税特例
概要
相続または遺贈によって取得した財産を、国、地方公共団体、特定の公益法人等に寄付すると、寄付した財産は相続税の対象にはなりません。
被相続人が遺言書によって遺贈する、受取った相続人が自分の意思で該当する団体に寄付をする、のどちらでも適用できます。
国や地方公共団体または特定の公益法人に寄付した場合
以下の要件すべてに当てはまることが必要です。
・寄付した財産は、相続や遺贈で取得した財産であること。
みなし相続財産の生命保険金や退職手当金も含まれます。
・相続税の申告期限までに寄付すること。
・寄付する相手が、国、地方公共団体、特定の公益法人であること。
(注)特定の公益法人の範囲は独立行政法人や社会福祉法人などに限定されており、寄付の時点で設立されているものが対象になります。
具体的には、以下のような組織が対象になります。
・日本赤十字社
・公益財団法人日本ユニセフ協会
・公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
私は動物(特に犬)が好きなので、関西を拠点に活動している日本アニマルトラスト(ハッピーハウス)の活動を支援しています。
また、地方自治体も対象になりますので、相続財産を市町村に寄付(ふるさと納税)することも可能です。その場合は、所得税と住民税の控除にもなり、返戻品を貰えることもあります。
ふるさと納税に興味のある方は、相続した財産からされる方が税金のメリットが大きくなります。
特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合
公益信託の信託財産とはあまり聞きなれませんが、要するに信託銀行に託して預ってもらって、そこから公益に資する用途に使ってもらうことです。こちらも以下の要件すべてに該当する必要があります。
・寄付した財産は、相続や遺贈で取得した財産であること。
みなし相続財産の生命保険金や退職手当金も含まれます。
・相続税の申告期限までに寄付すること。
・公益信託が教育又は科学の振興、文化の向上等に貢献することが著しいと認められる一定のものであること。
受託者は信託会社(銀行)に限られ、受入れる資産は金銭等に限られます。
特例の適用除外
次の場合は特例の適用ができません。
・寄附した日から2年内に寄付した先が特定の公益法人に該当しなくなった場合や、寄付した先がその財産を公益を目的とする事業の用に使っていない場合。
・寄付した人やその親族の相続税負担が結果的に不当に減少することとなった場合。
寄付した先の特定の公益法人から特別の利益を受けている場合はこれに該当します。
特例の適用手続
相続税申告書に寄付した財産の明細書や一定の証明書類を添付することが必要になります。
その他の留意点
寄付する財産はそのままの形を保ったまま、すなわち、現金化しないようにしましょう。
不動産や有価証券といった相続財産を寄付されるのであれば、そのまま不動産や有価証券の形で寄付する必要があります。もし現金化されたものを寄付した場合には、相続税の優遇措置はうけられません。
また、不動産等の現金以外の財産を寄付される際は、受入れる団体の意向も確認をしましょう。